★ 移住から始まる新たな人生
私が本州から北海道に移住して30年がたちます。
当時はインターネットも普及しておらず、情報を得るのも簡単ではありませんでした。人の紹介や情報を持っている団体などで情報を得るか、一か八かで現地に行ってみて、自分で見てみるしかなかったものです。
今はネットに様々な移住情報があふれていて、移住テーマのテレビ番組もありますし、自分に合った地域を探すマッチングサイトまであります。
でも情報の入り口の部分で「ま、でも夢の話か…」とあきらめてしまっている人も多いのではないかと思います。
テレビを見ていると、
いなかの暮らしなんて夢物語でしょ。
移住っていうけれど、結局何なん?
農業なんて、できるわけないじゃん!
田舎なんかに行って、仕事ある?
だから、移住なんて無理無理…
興味はあるけれど、このようにあきらめている人に、是非そうではないことを伝えたいのです。
私自身が移住者として得てきた体験や、20年以上も移住相談に携わってきた中で得てきたことを、皆さんにお伝えしていければと思います。
★ 移住のいろいろ
今住んでいる場所から、違う地域に生活拠点を移すことを移住といいますが、実は色々なパターンがあります。
・Uターン:いわゆる、地方から出た人が、故郷にもどること。
・Iターン:生まれ育った地域(主に大都市)からどこか別の地方へ移り住むこと。
・Jターン:地方からどこか別の地域(主に大都市)に移り住み、その後生まれ育った地方近くの(大都市よりも規模の小さい)地方大都市圏や、中規模な都市へ戻り住むこと。
・二拠点・多拠点居住:生活拠点を1つに絞らず、都市部と地方を行き来する暮らし方。
移住の進み方だけでもいろいろなるわけですから、人によっても当然様々なパターンが考えられます。あなたなりの移住を見つけることが、人生の変わる幸せな移住を見つけることにつながります。
★ 子育て世代こそ「移住という選択」
移住というと、いわゆる老後をイメージする人も少なくないかもしれません。テレビ番組のイメージもあるのかもしれませんね。
また地方の街にお年寄りが多いのも、そうしたイメージにつながるのかもしれません。老後は、人込みとは無縁の自然あふれる田舎でゆったりと…。都会の喧騒の中で、働いてきた方には確かにそういう願望もあるのでしょう。
でも、地方の街の暮らしは、意外と厳しい側面もあるのです。交通機関、ショッピング、病院、学校、仕事。ある意味、都会と次元の全く違う環境があり、それを理解することが移住する上で大切なことです。
さらに年齢や家族構成によって、生活における必須条件は変わってきます。人口減により地域のインフラの減少、縮小しているのも現実です。
地方の街は地域を少しでも元気にするために、様々な努力を行っています。特に、子育て支援に力を入れる自治体はとても多いようです。保育料や高校卒業までの医療費などの無償化などは、子育て世代には非常に助かりますよね。
都会に比べ、庭付き一戸建てがはるかに安く入手出来たり、自治体から助成金が出るなど、都会ではなかなか出来ない暮らしがあります。
こうしてみると、特に子育てをする若い世代への支援が厚い地方への移住は、若い世代こそ向いているのではないか、と私は思います。
★ 都会と異なる地方での暮らし
そのほかにも様々な条件の違いがあります。年齢や家族構成によっても、移住の条件は変わるのではないでしょうか。
【自家用車】
若いうちは車の運転も苦にならないですが、年を取るとつらくなってくることもあると思います。しかし、都市部のように公共交通機関が潤沢にあるわけではありません。鉄道はあっても1日に数本というところも珍しくないので、必然的に生活に自家用車が必要になってきます。都会ではカーシェアという選択もありますが、田舎では基本的にありません。
【買い物】
今や日本中どこに行ってもネットショッピングはできるので、基本的には困らないのでしょうが、やはり普段の食品や日用品の購入できる店があることは大切ではないでしょうか。徒歩圏内にどの程度の商店があるのか、車が必要となるのか。大手系列のドラッグストアやスーパーなどは、ある程度人口のある商圏に出店するので、田舎はおのずと店が少なくなりがちです。
【病院】
地方には自治体による病院や診療所の場合が多いですが、人口減少により維持できなくなったり、医師の確保が出来ず閉院することも少なくないようです。複数の診療科を持つ総合病院や専門病院は中心都市に存在することが多く、通院手段や通院時間など考慮する要素はたくさんあります。特に、分娩可能な産婦人科は大きく減っており、中心都市でも限られる傾向にあります。
【学校】
小学校・中学校は、かつては集落ごとに合ったものですが、近年は人口減少に伴う子供の減少で統廃合が進み、各自治体はスクールバスにより子供を集めているようです。しかし高校や専門学校、大学などとなると中心都市や、さらに都市部に出る場合も少なくありません。子供の成長とともに、暮らしの形も変わってくるかもしれません。
【仕事】
インターネットの普及により、田舎でもリモートで都会での仕事を続けられるようになってきました。しかし、地域とのつながりを考ええた場合、やはりその地域内で働くという選択が最も多いのではないでしょうか。地方では一次産業である農林水産業が基幹産業という場合が多いのも実情です。田舎で仕事をして生活するにあたっては、未経験の一次産業にどう関われるか…というのが大切な視点です。
【住宅】
都会と比べ、田舎での住宅確保は未知数です。でも、自治体が移住対策の一環として、積極的に空き家情報を出していることも多いです。都市部と比較すると、中古物件が驚くほど安く手に入ることも多く、庭付き一戸建ても珍しくありません。住宅の作りも、地方によって全く異なり、特に北海道のような寒冷地では、近年は二重窓や複層ガラスは当たり前、断熱もしっかり入っている住宅が多いです。反対に夏の気温が高くなってきているので、エアコンも必要になってきました。土地や住宅の取得に際し、助成金を出す自治体もあり、若い方でも住宅取得のハードルがぐんと下がってきていますね。
★ 移住は、前向きなこと
移住にかかわる条件はたくさんありますが、検討する際に大切なことは、都会と比較して何がないかではなく、自分や家族にとって、許容できる点は何かを考えることです。
つまり…
・集落に店がない⇒隣町にあるスーパーまで車で20分で行ける
・町立の診療所が1つしかない⇒普段は常備薬で大丈夫なので、必要な時だけ大きな病院に行くのだったら1時間くらいかかってもいい。
・仕事は一次産業だけしかない⇒田舎だからこそできるのが一次産業
…というように考えると、
前向きになりませんか?
このまま生活でいいのだろうか、地方で暮らしたらどうなのかな、移住といっても様々な疑問がわいてくると思います。そうした疑問や不安に寄り添い一緒に考えていきたいと思います。
大事なことは、あなた自身が、そしてご家族が、理解し納得したうえで移住を選択できるということです。幸せな移住は、人生を大きく変えることにつながります。家族の幸せを、移住でつかんでいただきたいと思います。
★ 地方創生と移住支援政策
国が、都市部に集中した人口を地方に導こうという、本格的な移住対策に取り組み始めたのは2008年だといわれています。
当時の総務大臣が地域力創造プランを発表し、「地域連携による『自然との共生』」を核として掲げ、都市部の若者を地方へ送り込み、地域の活性化や定住を図る取り組みが本格化したのはこのころだそうです。
「地域おこし協力隊」もこの翌年始まり、都市地域から地方の過疎地域へ、若者を中心とした定住定着を促進する取組となっています。
上手に活用している地域では、地域おこし協力隊の3年間の任期における地域での活動を支援し、その後の定住につなげています。
地域として協力隊員に明確なメッセージを伝え、協力隊員もそれを受け止め、地域と協力隊員が二人三脚で活動することが出来ると、任期後もそのまま地域での活動継続につながっていくことになります。まさに定住につながるツールです。
また、コロナ以降はリモートワークの普及によって、都会の仕事をそのまま地方でもできるようになりました。
温暖化による気温上昇で、夏の間だけ酷暑を避けて冷涼な地方に暮らしながら仕事をするという「二拠点居住」など移住の姿も様々な形となってきました。
今の都会での暮らしから、暮らしも仕事も完全に地方に移すという「移住」は、その人や家族の価値観や地域とのかかわり具合に応じて、ゼロか百ではない選択が可能となってきました。
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★ 移住アドバイザー:奈々村 弥(なむ)
東京都内の大学を卒業後、出身地ではない北海道に渡り、農業関連の仕事に就く。20年以上にわたって農業への人材発掘に携わり、農業での移住支援の最前線に立ってきた。自身が移住者であり農業にかかわってきた経験から「はたらく×暮らし×農業」をつなぐライフコーディネーターとして、Well-Beingな移住を支援する。国家資格キャリアコンサルタント。
移住に関する疑問や不安、聞いてみたいことなどがありましたら、どんなことでも気軽にご相談ください。フォームからのご連絡をお待ちしております。
★ 「移住」に関するリンク集
あなたの移住を探すには、しっかりとした情報を得ることが必要です。こうした情報収集のための行動が、あなたにとっての「移住に向かう初めの一歩」となるはずです。
・JOIN-FURUSATOふるさと回帰支援センター=東京・有楽町駅前の東京交通会館8階にある国内唯一の全国の移住情報をもつ相談センター。全国44都道府県と1政令市の相談窓口が開設され、専属相談員が常駐し相談対応しています。大阪にも拠点があり、特に西日本の情報を多く取り扱っています。このほかにも都道府県が独自に開設している相談窓口もあります。
・JOIN-FURUSATO移住・交流情報ガーデン=東京駅八重洲中央口から4分、民間企業と地方自治体が連携した新たな移住・交流ビジネスの発信や、地域おこし協力隊に関する情報発信など行っています。各自治体のパンフレットも豊富に取り揃えています。
・ピタマチ=ふるさと回帰支援センターとTOPPANが共同開発した移住のマッチングサービス。あなたの理想の暮らしを、掲載されている地方のくらし情報をマッチングして「ピッタリ度」を診断してくれます。移住について、まだ何もわからないという方にはおすすめ。
・スマウト=面白法人カヤックが運営する、地方から発信されたプロジェクト情報に応募する形での、地方とのマッチングサイト。自分のスキルを地方で活かすという視点から、地方との柔軟な関わり方を見つけられます。
・いいかも地方暮らし=内閣府地方創生推進事務局が運営する移住応援サイト。地方移住について仕事、お金、住まいというテーマから詳しく説明する「移住のてびき」や、様々な形で地方に暮らす、移住者へのインタビューなど、豊富な情報が掲載されています。
このほかにも、各自治体が運営する移住情報ポータルサイトや自治体のホームぺーージがありますが、北海道だけでも179市町村と非常に多くのサイトがありますので、移住候補先をある程度絞ってから、その地域についてさらに詳しく知るためと、考えた方が良いかもしれません。
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